2011年4月26日火曜日

信用不安連鎖の恐怖に震える市場、中国経済の減速成功が焦点

 [東京 7日 ロイター] 程度の違いはあれど、債務削減計画に反対するギリシャ国内のデモや「PIIGS」と呼ばれるような欧州諸国への債務問題懸念は今に始まったことではない。
 グローバル金融危機を脱出する過程で財政に負担がかかるのは広く認識されていた。投資家のリスク回避行動の側面には、年初から上昇してきた株価を背景とした利益確定売りがある。
 ただ米ダウが一時、1000ドル近い過去最大の下落となった原因が誤発注だとしても、その際に各マーケットがみせた狼狽(ろうばい)ぶりは、信用不安連鎖の恐怖がまだ投資家の脳裏に焼き付いていることを如実に示した。 
 <信用不安への恐怖で金融株が下落> 
 世界的な同時株安が進むなか目立つのは金融株の下げっぷりだ。6日の米市場では、金融銘柄の下げが著しく、S&P金融株指数は4.1%安。バンク?オブ?アメリカ<BAC.N>は7.1%の急落となった。欧州市場でも銀行株の下げがきつく、バークレイズ<BARC.L>やBBVA<BBVA.MC>が下げている。 
 またギリシャやポルトガルとは経済規模のケタが違うスペインが債務問題を深刻化させれば、その影響は計り知れないため、スペインに関係が深いとみられているフランスの銀行、ソシエテ?ジェネラル<SOGN.PA>やクレディ?アグリコール<CAGR.PA>も大きく下落している。
 一度始まった信用不安の連鎖がなかなか止まらないのはリーマン?ショック時に嫌というほど経験したことであり、金融株の急落はその恐怖が消えていないことを示す。
 スペインの公的債務水準はユーロ圏の中で特に高く、2009年の対国内総生産(GDP)比率は11.4%。 格付け会社スタンダード?アンド?プアーズ(S&P)は4月28日、スペインの信用格付けを1段階引き下げている。 
 三菱UFJモルガン?スタンレー証券?投資情報部長の藤戸則弘氏は「EUやIMFはギリシャの支援計画で合意したが、1100億ユーロで間に合うかは不透明だ。支援と引き換えの債務削減計画も実行は難しい。またスペインの債務問題が深刻化すれば、各国金融機関が多額のエクスポージャーを持っているため不良債権の連鎖が起きる可能性がある」と指摘する。 
 日本の銀行も例外ではなく、三菱UFJフィナンシャル?グループ<8306.T>や三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>などのメガバンク株も、この連日で大幅な下落となっている。「安全資産」とみられているのは為替の円だけで、相対的な日本株買いなどにはつながっていないのが現状だ。
 <中国の金融引き締め懸念や米GS問題が背景との見方も> 
 低金利と景気回復が共存し、「ゴルディロックス」と呼ばれるような好環境をおう歌していた株式市場だったが、その裏ではリスク要因が徐々に大きくなっていたことも見逃せない。
 中国人民銀行(中央銀行)は2日、今年3度目となる銀行の預金準備率引き上げを発表。過熱する不動産市場抑制のために、さらなる金融引き締めが実施される可能性も指摘されている。
 市場では欧州経済がスローダウンしようと、中国をはじめとするアジア経済が世界経済をけん引してくれるとの期待が大きい。「アジアは貯蓄率が高く、経常収支も黒字だ。自分の資金で経済を刺激できる状況にある」(みずほ証券エクイティ調査部シニアエコノミストの飯塚尚己氏)という。
 だが、それだけに不動産バブルや人民元問題をうまく解決しながら中国経済が巡航速度を維持できるかが焦点となっており、不安も大きい。 
 また米証券取引委員会(SEC)がゴールドマン?サックス<GS.N>を詐欺罪で訴追した影響を指摘する声もある。「ヘッジファンドのポールソン?アンド?カンパニーがサブプライムローン(信用力の低い個人向けの住宅ローン)関連商品の設計に関与していたとされており、問題の波及を嫌う投資家は解約のタイミングを待っていた。45日ルールで6月末の解約は5月15日までに申し込まないといけないため、欧州問題が解約のきっかけをつくった可能性がある」(準大手証券ストラテジスト)という。投資家がリスク回避に動きやすいタイミングが重なったことで株式などリスク資産が大きく巻き戻された可能性がある。
 <混乱収束には政策対応が不可欠>
 ガイトナー米財務長官が7日、主要7カ国(G7)財務相とギリシャ支援問題について電話協議することが明らかになり、東京市場では円高が一服。日経平均も下げ幅を縮小させた。
 恐怖心が強まる市場では「ECBやIMFを通じて、金利負担分の減免などが考えられる。ただ、ドイツなどの追加支援を受ける代わりに、問題となっている国が財政やリクイディティに関し、政府主導で追加施策を打ち出すことが重要だ」(ドイツ証券チーフエクイティストラテジストの神山直樹氏)と、各国の政策対応を求める声が出ている。 
 6日の市場混乱に拍車を掛けたのはECBの理事会がタイミングよく開かれたのにもかかわらず、会見したトリシェ総裁からは何の発言も出てこなかったためとの指摘もある。「現時点でユーロを支援するには、大きく注目を集める何らかの発表が必要だ。ただ、こうしたものはトリシェECB総裁からは出てこなかった」(GFTの外為調査部門を統括するキャシー?リエン氏)。混乱したマーケットには当局からの適切なメッセージが欠かせない。 
 日米のマクロ指標は順調に回復、欧州も4月のユーロ圏PMI(製造業購買担当者景気指数)改定値が2006年6月以来の高水準となるなどしっかりしている。財政政策の効果が大きいとはいえ、世界経済は回復基調にあり、金利も低いままだ。だが、マーケットはちょっとしたショックで大きく動揺し、リスク要因もあちこちに散らばっている。
 マクロの好環境が続く間に財政などストック問題の解決に向けたに道筋を立て自律的な成長路線に乗ることができるかどうか。今回の混乱は世界経済が非常に細いロープの上を渡っていることを気付かせたといえよう。
 (ロイター日本語ニュース 伊賀 大記記者 編集 石田仁志)

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引用元:FF11 RMT

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